2022年になったし、「サルゲッチュ ミリオンモンキーズ」について語ろう!

 サルゲッチュ ミリオンモンキーズ。それが私の中にあるゲームの、オタクとしての原風景だと思う。私はこのゲームを持っていなかった。年に数回会う親戚が持っていて、その親戚が来るときはずっとこのゲームを遊んでいたように思う。当時の私にとってそれは夢のようなゲームだった。

 

 そもそもサルゲッチュはピポヘルというヘルメットを着けてやたら知能の上がったサル、ピポサルを網で捕まえて元に戻すというゲームだ。ピポサルを捕まえるにはガチャメカと呼ばれる様々な道具を駆使して逃げ回るサルを追いかける必要があって、コミカルな設定ながらバラエティに富んだ奥の深いゲームだ。しかしこれはサルゲッチュ本編の説明であって、ミリオンモンキーズは外伝の作品にあたる。ミリオンモンキーズでは現実の東京や横浜をモデルにしたステージを舞台に武装したサルたちが襲ってくるというものになっている。本編のデフォルメされた造形とは対照的に、リアルな都会のただ中にSFチックな大型ロボットや戦車が登場する異色の作品だ。そこをアホ面提げてサルが歩いているのだが、ストーリーや設定は本編と比べてかなりシリアスになっている。それとピポサルを捕まえなくてもいい。最終的にはピポサルではない謎の生命体が真の敵だという展開になるからだ。

 

 このゲームにはワクワクが詰まっていた。UIでさえワクワクした。メニュー画面ではシンプルなUIに近未来的な印象の効果音が鳴る。一言で表すとハイテクだ。その語感のなつかしさも含めてそう表現したい。

 対戦でいろいろなキャラを動かすことができた。それだけで楽しかった。サルゲッチュシリーズは基本的にカケルという男の子が主人公で、今作ではカケルをサポートするキャラクターたちや、ピポサルそのもの、そしてピポサルのボスであるスペクターまで使うことができた。攻略本に書かれたパスワードを入力すると隠しキャラを使うことができて、それも最高にワクワクした。PS2のゲームなのに4人で対戦することができて、当時の私はその方法こそ持たなかったものの、いつか4人で対戦してみたいという期待があった。

 たくさんのキャラクターが動かせるゲームというのはそれだけで私にとって幸福だった。しかも対戦だけでなくストーリーモードでも動かすことができる。私はチャルという緑髪のコンピュータプログラムのキャラ(アニメ版ではメイド服を着ている)が大好きで、チャルばかり使っていた。思えばこのころからオタクをこじらせたのかもしれない。気になる人は「サルゲッチュ チャル」とか「ウィルスチャル」で検索をかけるといい。

 ストーリーモードでは現実の都会を舞台に武装したサルたちや大型ロボットが暴れまわっていた。当時の私は東京がどんな場所かなど全く知らないのだが、ただ歩き回っているだけでも楽しかった。そこには未来的なものへの期待があった。

 

 私はミリオンモンキーズを経てSF的世界観や萌えキャラクターといった、いわゆるオタク的素養の萌芽が芽生えたのだと思う。もちろん当時の私にはそんな語彙などなく、ただ未来に対する夢のようなワクワクがあったのだ。

 

 結局、当時の私はこのゲームをクリアできなかった。親戚と遊ぶときは専ら対戦をしていたし、時折ストーリーモードをプレイしても私たちには難しすぎた。当時の私はこのゲームの全貌を知ることがなかったのである。だから、このゲームは夢のゲームのままで終わっていた。この大型ロボットを倒した後に、輸送車をピポサルたちから護衛した後に何が待っているのか、どんなワクワクが待ち受けているのか。それらを知ることなく、ずっと夢に見たままで、そうして時間が経って忘れていった。

 

 あれから大人になった。ミリオンモンキーズは中古ショップで簡単に手に入った。ストーリーモードは単調で敵が硬いだけの難しさだった。もちろん大人になった私を手こずらせるほどのものではなかった。そして、ストーリーは消化不良のまま投げっぱなしで終わってしまった。対戦モードはキャラクターこそ多いものの、いわゆるコンパチ的な水増しも多く、バランスもめちゃくちゃだった。

 

 実はミリオンモンキーズは本編などに比べて評価が高くないゲームであった。それはネットで調べればすぐにわかることだ。当時でもインターネットは使えた。でも小学生の私はワザップで血眼になって攻略情報を探していただけで、作品の評価なんて、調べるという発想すらなかった。ただ夢中になっていただけだった。

 別に私は当時のゲームは良かったと懐古しているわけでもないし、大人になってしまったと嘆いているわけでもない。ただ、当時の体験の中にワクワクがあって、その体験が今の私を作っている。年の瀬になってそういうことを思い出して、年が明けてこの文章を書いている。たまたま、自分の原風景を思い出して、それを言葉にしてもう一度確かめたかった。

 

 サルゲッチュシリーズはミリオンモンキーズ以降、路線を変更した。カケルたち主人公ではなくピポサルをフィーチャーするゲームが多く出た。もはやピポサルを捕まえることはなくなった。私はそれらには触れていないので詳しくは分からないが、あまり芳しくなかったのだと思う。サルゲッチュの続編が作られることは……実情を詳しくは知らないが、もう絶望的なのだと思う。続編を待ち望んでいないといえば嘘になるが、もはや期待はしていないし、きっとあのワクワクはもうどこにもないのだと思う。今は、新しいゲームが作られて、新しいワクワクが今の子どもたちに届けられればそれが一番いいと思う。

 

 2022年になった。私はサルゲッチュについて語った。当たり前のことだが、昔の作品をいつ語ってもいい。「もう令和だぞ」なんて茶化さなくたって、大人になっても成長できない自分を嘲るようなことをしなくたって、語っていい。それが現在の自分を作っていて、そこに現在の自分がいるから。

 まぁ、でも、せめて申年にやるべきだろとは思う。あけましておめでとうございます。